バージョンアップでさらに進化したDeeTrimレビュー!劣化させずダイナミクスを一定に
ダイナミクスを揃えるということは聴きやすくする、音圧を上げるといったことで重要となってきます。
しかしボーカルのようにダイナミクスの大小が激しく、コンプレッサーを使っただけではなかなかうまくいかないことがあるのです。
このような場合フェーダーのオートメーションを書くことでいわゆる「手コンプ」を行い、小さい音を持ち上げ、大きい音を下げるといったことを手動で行います。
しかし、この手コンプはかなり労力を必要とします。
そのためWaves社のVocal Riderのような、手コンプを自動で行うプラグインがあるほどです。
しかしこのVocal Riderよりも圧倒的にシンプルでダイナミクスを揃えることに特化したのがDeeTrimです。
DOTEC-AUDIO - "DeeTrim" VST plug-in
DeeTrimの何がすごいか?
- 25ドル(SONICWIREで2700円)という安さ。
- DOTEC-AUDIO製品を持っているならさらに15ドル割引(1080円で購入可)。
- パラメータはアウトプットのみ。
- インサートするだけでダイナミクスが一定に。
何と言っても価格の安さとシンプルさです。
フェーダーのオートメーションを書くことなく音量を一定にしてくれるというのは、ありがたいプラグインですね。
そしてDOTEC-AUDIO製品の特徴としてバージョンアップで大きく進化するという点です。
リリース当時のDeeTrimとは別物
DeeTrimがリリースされてすぐにデモを試しました。しかし初出、及びその後にリリースされたバージョンは問題がありました。
- 小さい音の音量が変わらず不自然なダイナミクスになる。
- リミッターをかけたような平坦すぎる音になる。
- ボーカルのブレスさえ持ち上げってしまう。
といったことがあり、購入までは至らなかったのですが2017/2/15にリリースされたバージョン2.0.0によってこの問題が解決。使いやすいプラグインとなり購入しました。
DeeMaxを持っていたためお安く購入できました。
DeeTrimを使って実力を確認しよう
初音ミク V3を使用し、書き出した音声ファイルにDeeTrimを適用します。
また、他プラグインとの比較も行います。
上から順に元の音源、DeeTrim、MV2(Waves)、AutoGainProMk2(HorNet)、Renaissance Compressorの波形です。それぞれノーマライズ(-1db)を行っています。
この時点で分かると思いますが、DeeTrimの波形は大小が少なくなっていることが分かると思います。
モノラルのほうが分かりやすいですが、初音ミクで書き出した音源がステレオなのでご了承ください。
MV2
MV2は小さい音を持ち上げることができるコンプレッサー。大きいところをコンプレッションするだけのコンプレッサーとは違い、細かなニュアンスを出す小さな音を綺麗に持ち上げます。
弱点はノイズも持ち上げてしまう。必要ではない小さすぎる音さえ持ち上げてしまうという点。(これらの問題は上位版にあたるMaxx Volumeで解決できますが、残念ながら所持していません。)
HoRNet AutoGain Pro MK2
高機能な自動オートメーションプラグイン。26.99ユーロというオートメーションプラグインの中では激安価格。LR、M/Sでの処理にも対応。今回はプリセットの『Vocal steady』を使用し、音量を一定にする設定にした。
弱点は設定項目が多く簡単には使えないこと。オートメーションが思い通りに動いてくれないこと。音のアタックを無駄に持ち上げてしまうこと。オートメーションをして書き出すとなぜかオートメーションがカクカク…など。
正直買って損したプラグインなのでもしこれを購入しようと思っている方は、さらに安く下位版のAutoGain Proを購入したほうが良いと思います。
Renaissance Compressor
ここで普通のコンプレッサーの登場です。今となっては古いプラグインですが、よく出来たコンプレッサーです。
今回の検証では普通のコンプレッサー代表として登場してもらいました。こちらもプリセットを使用し『Vocal』というプリセットを使用しました。ボーカルはコンプレッサー2段掛けすることが多いですが、RCompだけ2つ使うのはずるいので1つだけで頑張ってもらいます。
実際に音源を聴いてみましょう。オリジナルから順にRCompまでです。
…正直よく分かんないですね。
DeeTrimでブレスが持ち上がってしまいましたが、おそらくこのミクのブレスが特殊でDeeTrimがブレスとして判断してくれなかったのではないでしょうか。今回の検証で初めてブレスが持ち上がってしまい、それまでボーカルに適用しブレスが持ち上がることはなかったためこの点は安心してください。
え?信用できない?信用できなければ是非デモ版を試してみてください。
しかしDeeTrimのダイナミクスが整っていることが分かったと思います。
特にボーカルには持って来いではないでしょうか?
とはいえ万能ではないDeeTrim
ボーカルには向いているDeeTrimですが、間違っても鍵盤の音に使ってはいけません。
ではピアノに適用してみましょう。何も掛けていないもの→DeeTrimを適用したものです。
なんてこった…という感じ。音を一定に保とうとするためうねりが発生したりリリース部分が持ち上がってしまうのです。コンプレッサーと違いソースを選びます。
もちろんマスタリングに使ってしまうと、今までのMIXは何だったんだ?という自体になります。意外とドラムバスには使えますが…。
つまりこのDeeTrimは意地でも音量を一定にするのです。
そのため元のダイナミクスを変えてしまうという弱点があります。
DeeTrimの大きな弱点
ボーカルを一定に音量を整えることができましたが、元々大きかったところが小さく、小さかったところが大きいところと同じレベルまで持ち上がるため、ダイナミクスが変化してしまいます。
コンプレッサーの場合『大きい部分を圧縮』のため大きい部分は大きいままです。ダイナミクスが小さくなりますが、変化することはありません。
ダイナミクスを変化させてしまうDeeTrimは
元のニュアンスを殺してしまうのです。
これが弱点です。つまり結局はオートメーションを書くのか…。と思いますよね?
実際ボーカルにDeeTrimを適用したあとにオートメーションを書くことがあります。しかしDeeTrimを適用していない場合を比べると圧倒的に楽なのです。
また、開発者であるフランク重虎さんはDTMステーションPlus!にてDeeTrimを適用したあとにコンプレッサー(DeeComp)を使用し、アタックを出すといったテクニックを披露していました。
より良いサウンドにするにはDeeTrimだけで終わりとせずにコンプレッサーやトランジェントシェイパーを使うのが良いのかもしれませんね。
お手頃価格の使えるプラグイン
歌ってみたなんかのボーカルMIXをよくする方はやはりボーカルのダイナミクス処理に頭を悩ませると思いますが、このDeeTrim非常に役立ちます。音圧を上げたい方にも使えるプラグインですよね。
DeeTrim及び、その他DOTEC-AUDIO製品はデモ版をダウンロードし試すことができます。一定時間使用するとバイパスになってしまう仕様ですが、インサートし直すとまた使用でき、日数の制限もありません。Wavesのデモ版とか期間が短くてあんまり試せないですよね。
DeeTrimついての質問があればコメントかVocareate Project、フリーVSTbotのTwitterまで。